走行中にハンドルが取られる原因と対策5つを知人技術者と整理してみた

仲の良い技術者とドライブに行った先の休憩中、「クルマが左に流れてしまうことに悩んでいる」という話を聞きました。
調べてみると、この手の悩みを持つ方は意外と多いようで、事象に応じて様々な対策をなさっています。

「路面のわだちでハンドルが取られる」
「直進時にクルマが左に(右に)流れていってしまう」

クルマの直進性が損なわれる要因はさまざまですが、
今回は、こんなことにお困りの方のヒントになる情報を整理しました。

内容について、記事の中で説明していきます。

NOTE
言葉の定義について 本来であれば「ハンドル」はバイクや自転車のようなバータイプのものを指します。
自動車の操舵を行う通称「ハンドル」はステアリングホイールが正式名称ですが、この記事ではハンドルと表現しています。
スポンサーリンク

ハンドルが取られる原因と対策1.車両のジオメトリによる影響

ハンドルが取られる原因の1つ目は、車両のジオメトリによる影響です。
ジオメトリとは「幾何学」のことで、ここではサスペンションやステアリング系の構成部品の形状やとりつき方を意図しています。

ハンドルが右や左に取られてしまう事象は、「スクラブ半径」と呼ばれる寸法が影響しています。

スクラブ半径とは

スクラブ半径は、タイヤの中央(タイヤの赤道とも呼ばれます)と、ステアリングの軸が路面と交わった点との距離です。

下の図をご覧いただくとイメージをつかみやすいでしょう。
以下の図で示す紫色の寸法が、スクラブ半径です。

引用:人気チャンネルEngineering Explainedより

ハンドルを切るときは、必ずしもタイヤの中心を軸にして舵角がつく訳では無い、ということです。

スクラブ半径のせいで加速力や減速力がハンドルを切る力にもなる

実は、スクラブ半径が存在するがゆえに、加速力や減速力がハンドルが切るように作用します。

図にするとこうした感じで、タイヤを上から見ると、スクラブ半径は紫色の矢印の部分となります。
ハンドルを切ると、タイヤは赤の点を中心に舵角がつくので、加速力や減速力はハンドルを切るように作用するんです。

これをトルクステアといいます。

トルクステアは、
トルクステア(Nm) = タイヤの駆動力 (N) X スクラブ半径 (m)
で表されるので、
  • 加速力や減速力が大きいほど
  • スクラブ半径が大きいほど

トルクステアは大きくなります。

トルクステアについては、こちらの記事でも紹介されています。
ホンダ・シビックはなぜトルクステアが出ない?そこにある深い理由が動画にて判明

わだちがトルクステアを増大させる

トルクステアは、例えばわだちの上ではより感じやすくなります。
理由は、タイヤの接地点がタイヤの中心ではなくなり、スクラブ半径が大きくなることがあるからです。

上の図は、わだちの左寄りを走行している場合です。
図の通り、平坦な路面を走っているときに比べて、タイヤの接地点が左右のタイヤとも左にずれています。

このため、例えばブレーキ踏んで制動すればどちらのタイヤとも左へ切れようとします。
加速時は逆に右へ切れます。
この時の力は結構なもので、深いわだちではしっかりハンドルを保持していなくては進行方向をキープできないこともあります。

NOTE
トルクステアは、左右で等しく発生すれば大きな問題にはなりません。
実際には左右のタイヤに駆動力が伝わるまでの時間に差があったり、わだちの影響でタイヤの接地点が左右で異なったりするために、左右でトルクステアに差が生まれ、意図せずステアリングが切れてしまいます。

対策

車両のジオメトリは設計時に決まるものであり、ハンドルが取られることに関して根本的な対策をするのは容易ではありません。
対策としては、事象を悪化させないように、必要以上に大きなオフセットのホイールへ履き替えないこと、です。

覚えておきたいのは、
ホイールを履き替えるとスクラブ半径が大きくなり、駆動や制動でハンドルが取られやすくなってしまうことがある。
ということです。

特に、ホイールが外側へ張り出すような、オフセットの大きい社外ホイールへの変更は注意が必要です。

根本の対策は難易度が高いですが、悪化させない工夫は可能ということです。
すでにホイールが社外品へ変わっている場合は、純正ホイールへ戻して事象が改善されるか確認してみるのも手です。

ハンドルが取られる原因と対策2.アライメントが適正に調整されていない

ハンドルが取られる原因の2つ目は、アライメントが適正に調整されていないことです。

トー、キャンバー角や、トーによって決まるスラスト角などが適した角度に設定されていないと、ステアリングから手を離したときに車が左や右に流れかねません。

特にアライメントに左右で差があるような場合には、規格値に調整することで事象が改善する可能性があります。

対策

アライメント調整を行いましょう。

フロントタイヤ

フロントのトーは、相対的にトーアウトのホイールの方へクルマが流れやすくなります。

例えば、右側のタイヤのほうがトーアウト寄り(トーインの場合数値が小さい、トーアウトの場合数値が大きい)の場合、クルマは右側へ流れやすくなります。

フロントのキャンバー角に左右差がある場合、相対的にポジティブキャンバーであるホイールの方へクルマが流れやすくなります。
例えば、右側のタイヤのほうがキャンバー角が少ない(立っている)場合、クルマは右側へ流れやすくなります。

リアタイア

トー、キャンバー角ともに、リアタイヤの場合はフロントの説明と逆方向へクルマが流れやすくなります。

スポンサーリンク

ハンドルが取られる原因と対策3.タイヤの空気圧が適正でない

タイヤの空気圧が規格外となっている場合、左右どちらかにハンドルが取られたり、クルマが流されたりする原因となります。

特に、空気圧に左右差がある場合はなおさら。
タイヤに大きな抵抗が発生していたり、正しい接地状態でなくなることが、車両の向きを変えるように作用することがあります。

対策

冷間時、規定の空気圧に合わせましょう。
規定値は、ドアや、ドア開口部の車体に貼ってあるステッカーに記載されています。
ご自宅にポンプやゲージなどの道具がない場合は、お近くのガソリンスタンドで無料点検・補填してもらうことができます。

スポンサーリンク

ハンドルが取られる原因と対策4.タイヤが摩耗している

タイヤが摩耗している場合、接地点が不安定になることがあります。

タイヤのトレッドの中で摩耗している部位とそうでない部位がある場合、とあるタイヤの回転数において、それぞれの部位が接地したときの速度が異なります。

この結果、接地しているポイントによって左右のタイヤで速度に差が出てしまい、駆動力がクルマの向きを変えるように作用します。
わだちなどのフラットでない路面では、顕著です。

また、タイヤの摩耗が進行している場合、タイヤが設計通りの力を発生しにくくなります。
この結果、次の章で紹介する意図しない横力が結果として発生してしまうケースがあるんです。

対策

直進しない事象が現れたクルマで、タイヤの摩耗量が限度に近い場合は、新品タイヤへの交換が対策になります。

ハンドルが取られる原因と対策5.タイヤが意図に反して横力を発生させている

ハンドルが取られる原因の3つ目は、タイヤが意図に反して横力を発生させていることです。
残留コーナリングフォース(Residual Cornering Force)と呼ばれる力がこれにあたることがあり、RCFと略されます。

残留コーナリングフォース(Residual Cornering Force)
  • タイヤに舵角を与えようとせず
  • キャンバー角もつけない状態
でも発生するコーナリングフォース = タイヤ横方向に発生する力のことです。

実はRCFは全く無ければよいというわけではありません。
問題なのは、自動車メーカやタイヤメーカが意図していない方向に発生している場合です。

タイヤには左側通行用と右側通行用がある

日本の道路は左側通行ですが、雨水を路肩へ流すために左側へ傾いています。
このため日本向けのタイヤでは意図的に右側にRCFを発生させて、左側へ流れないようにタイヤを設計していることが知られています。

反対に、右側通行の諸外国では右側へ水勾配がついているので、RCFが左方向へ発生するようなタイヤが装着されることがあります。

つまり、タイヤには左側通行用と右側通行用があるんです。

ところが、左側通行の日本で右側通行用のタイヤを装着してしまうと、この狙いが崩れます。

もともと水勾配の影響でクルマが左に流れ環境で、さらにRCFが左に発生するタイヤを装着してしまえば、クルマが大きく左側へ流れてしまうことになるんです。
日本で左流れの悩みが多く訴えられているのは、並行輸入タイヤを装着したり、輸入車の仕様が影響しているためです。

原因と対策

残留コーナリングフォースに関する踏み込んだ説明と、私たちができる対策については、別の記事にまとめました。

関連記事 【真因はタイヤの残留コーナリングフォース】直進したいのにクルマが左に流れる原因 【横力を適正化しよう】クルマが左に流れるときの対策3つ スポンサーリンク

ハンドルが取られる原因と対策まとめ

この記事では、直進したいのにハンドルが取られたり、クルマが流されるときの原因について紹介しました。
わだちなどである程度ハンドルが取られるのは、クルマの構造上多少は発生してしまうことです。

その上でチェックする項目と順番は、次のとおりです。
  1. オフセットの大きいホイールに履き替えていないか?
  2. タイヤの空気圧は基準値内か?
  3. タイヤの摩耗状態

この上で、車両は正常なのにクルマが直進しない場合、タイヤのRCF(Residual Cornering Force)が原因となっていることがあります。
詳しくは、こちらに書きましたので、あわせてご覧ください。

関連記事 【真因はタイヤの残留コーナリングフォース】直進したいのにクルマが左に流れる原因 スポンサーリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。