【真因はタイヤの残留コーナリングフォース】直進したいのにクルマが左に流れる原因

愛車の左流れにお困りですか。

あるいは、対策のために調査をなさっているのに、
「ハンドルは手で保持するものだからしっかり握ればいい」
「そんなに気になるかい?」
なんて、的はずれな返答をされてお困りですか?

大切な愛車、一度気になってしまったのであれば、なんとか改善したいものですよね。
スッキリした気持ちで乗れなくなってしまいますから、運転の楽しみも半減です。

こちらの記事では、クルマの直進性に関する要因について整理しました。

関連記事 走行中にハンドルが取られる原因と対策5つを知人技術者と整理してみた

今回の記事では、タイヤの特性に着目して、クルマの直進性との関係について書いていきます。
あわせて、横力を低減させるための考え方についても紹介します。

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タイヤが意図せず発生する横力

そもそもタイヤは、次の力を受けたり発したりしています。

  1. 重量を支えるための垂直方向の力
  2. 駆動力・制動力を路面に伝えるための前後方向の力
  3. 進路を変えるための横方向の力

このうち、車両の進路に影響するのは横方向の力ですね。

一般的なイメージからすると、横力はドライバーがハンドル操作をして、タイヤに舵角を与えたときに発生しそうなものです。

しかし、必ずしもそうとは限らないのがタイヤのおもしろいところ。
タイヤにはいろいろふしぎな点があって、意図しなくても横力が出ていることがあるんです。

タイヤのふしぎ1.タイヤはまっすぐ転がしても横力が出る

タイヤには、実は舵角がついていなくても横力が発生しています。
この横力のことを、ラテラル・フォース・デビエーション(LFD)と呼びます。

ラテラル・フォース・デビエーション(LFD)
スリップ角0°、キャンバー角0°でタイヤに発生するこの横力のこと。
このラテラル・フォース・デビエーション(以下、LFD)は、さらに以下の力に分解することができます。
  • コニシティ
  • プライステア

このコニシティやプライステア力、スリップ角、セルフアライニングトルクについてはこちらの記事に書きました。

【コニシティとプライステア】直進したいのにクルマが左に流れる原因 スポンサーリンク

タイヤのふしぎ2.タイヤはまっすぐ転がしても切れようとする

もう一つのふしぎ。

タイヤは、まっすぐ転がしてあてげも切れたがっているということです。

つまり、スリップ角が0°の状態でもセルフアライニングトルクが発生しているんです。

では逆に、タイヤが切れたがらないときは、一体どういった状態なのでしょうか。

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タイヤのふしぎ3.タイヤが切れたがらないときも横力がでる

舵角が安定して、切れようとしない状態。
これを、セルフアライニングトルクが0の状態といいます。

タイヤはこの状態でもなお横力を発しており、この横力は残留コーナリングフォース(RCF)と呼ばれています。
そしてこの残留コーナリングフォースこそ、横流れの原因なんです。

残留コーナリングフォース(RCF)
セルフアライニングトルクが0となるスリップ角で、タイヤに発生する横力のこと。

横流れの原因は残留コーナリングフォースである

残留コーナリングフォース(以下、RCF)は、車両が左や右へ流れる原因となっている力です。

このことは、実験的にも知られています。 公開されているブリヂストンやダンロップの特許から、そうした情報を確認することもできます。

タイヤの選別方法 より引用

そして、種々の実験の結果、残留コーナリングフォースRCFの正、負の符号は車両の片流れ方向に対応し、また残留コーナリングフォースRCF大きさは、片流れの量にほぼ相関していることが確認されている。

タイヤの選別方法 より引用

乗用車用の車両の直進性及び片流れ現象は、前輪タイヤの残留コーナリングフォース、残留セルフアライニングトルクに関係があり、その影響を受けることが知られている。

タイヤの残留コーナリングフォースの予測方法、タイヤの残留セルフアライニングトルクの予測方法、及びタイヤの測定装置より引用

ちなみに、RCFを測定するためにはスリップ角を変えながら横力とセルフアライニングトルクを測定しなければならず、これがなかなか大変。

一方、LDFはスリップ角0°の状態に固定して測定できるので、例えばクルマの量産ラインなどではこのLFDを使って、RCFを予測することもあります。

もう一度、復習です。

残留コーナリングフォース(RCF)
セルフアライニングトルクが0となるスリップ角で、タイヤに発生する横力のこと。
ラテラル・フォース・デビエーション(LFD)
スリップ角0°、キャンバー角0°でタイヤに発生するこの横力のこと。
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横流れはRCFでコントロールできる

というわけで、横流れの原因はRCFでした。
こうなれば、横流れ対策はRCFを適正化すればよいこともわかります。

左側通行の日本は左へ流れやすい道路環境なので、RCFを右へ出すことが適しているというわけです。

以下はブリヂストンの特許からの引用です。

例えば、左側通行の路面の場合、一般的に進行方向左側に向かって傾斜が与えられているため、タイヤが右方向に向かうPRCFを発生する必要がある。

タイヤ より引用

では、RCFを右へ発生させるために各社はどのようにアプローチしているのでしょうか。

タイヤの設計でRCFをコントロールする

RCFをコントロールするために、タイヤの設計段階でプライステアに意思をいれることがあります。

タイヤの残留コーナリングフォースは、大きく分けて、ベルトのコードが変形することによって発生するベルト成分PRCFと、トレッドのブロックが荷重を受け、捻られることによって発生するパターン成分PRCFとがある。

タイヤ より引用

具体的には、タイヤのトレッドパターンと、タイヤのベルトの巻き方に意思を入れています。

タイヤのベルトの設計

ベルトのコード方向をタイヤ外周面側から見て右上がりに傾斜させることで、進行方向に対して右方向のベルト成分PRCFが得られ、ベルトのコード方向をタイヤ外周面側から見て左上がりに傾斜させることで、進行方向に対して左方向のベルト成分PRCFが得られる。このため、右側通行(左上がりの路面カント)の国では左方向のベルト成分PRCFを発生させ、左側通行(右上がりの路面カント)の国では右方向のベルト成分PRCFを発生させている。

タイヤ より引用

タイヤのトレッドパターンの設計

具体的には、当該周方向溝のタイヤ幅方向内側では、パターン成分PRCFが主に接地面内に生じる前後方向のせん断力によって発生し、タイヤ外周面側から見て右上がりのラグ溝によって形成されるブロックでは進行方向に対して左方向のパターン成分PRCFが発生し、タイヤ外周面側から見て左上がりのラグ溝によって形成されるブロックでは進行方向に対して右方向のパターン成分PRCFが発生する。

タイヤ より引用

タイヤの組み合わせでRCFをコントロールする

ところが、右側通行用と左側通行用でそれぞれタイヤを専用設計することは、開発にも製造にも時間と費用を要します。
メーカとしては、できることなら避けたいはず。

ブリジストンは、このことに関連して次のように言及しています。

しかしながら、前述した従来の空気入りタイヤでは、左側通行国用と右側通行国用とで構造を変える必要があり、単一種の空気入りタイヤで左側通行国用と右側通行国用とを共用化することが困難となって、製造コストが増加するという問題があった。

(中略)

本発明の目的は、直進走行性が高く、単一種の空気入りタイヤで左側通行国用と右側通行国用とを共用化できる空気入りタイヤの装着方法を提供することにある。

空気入りタイヤの装着方法 より引用

一方、そもそもタイヤには製造ばらつきがありますから、当然ながら発生するRCFにはばらつきが生じます。
特に、こちらで紹したコニシティは避けることのできないばらつきであり、発生しないように製造することは容易でありません。

そこで、出来上がったタイヤを測定し、それを適切な配置にすることで、4輪トータルのRCFをうまい具合に調整することも行われています。

これは、ダンロップの特許からの引用です。

従って、車両の片流れを防止するには、この残留コーナリングフォースRCFの絶対値が小さい良品タイヤを用いるか、又は車両装着時の左右のタイヤの残留コーナリングフォースRCFの合力が小さくなるよう左右のタイヤを組み合わせて四輪車両に装着することが望まれる。

タイヤの選別方法 より引用

続いて、こちらはホンダの特許です。

自動車を組み立てる量産ラインで、4本のタイヤをどのように配置すべきか?についての発明です。

各車輪取付部の車輪横力の合力の影響と路面カントの影響とを打ち消すような2つのタイヤの残留コーナリングフォースの合力が目標値として設定される。なお、路面カントが車体に与える影響は、自動車の右側走行地域と左側走行地域とで異なるため、上記目標値は自動車の走行地域に応じて設定される。

自動車におけるタイヤの配置方法 より引用

製造ラインで車体に組み付ける前にタイヤの横力を測定しておき、適切な配置で取り付ける技術も考えられていることがわかります。

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直進したいのにクルマが左に流れる原因まとめ

ひとまずこの記事はここまで。

「【真因はタイヤの残留コーナリングフォース】直進したいのにクルマが左に流れる原因」ついて書きました。

横流れの直接の原因となっているのは、タイヤの残留コーナリングフォース(RCF)です
タイヤの残留コーナリングフォースとは、タイヤが切れようとも戻ろうともしない状態で発生している横力のことでした。

このことを踏まえ、私達の愛車にはどういった対策ができるのか?については、こちらに書きました。

【横力を適正化しよう】クルマが左に流れるときの対策3つ

お読みいただきありがとうございました。
しげでした。

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