【コニシティとプライステア】直進したいのにクルマが左に流れる原因

クルマが左流れのを起こす場合、アライメントや路面の影響以外にも、タイヤそのものに原因があることがあります。

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タイヤは、直進しているときにも曲がろうとする力を発していることがあります。
この力のことを、ラテラル・フォース・デビエーション(LFD)と呼びます。

ラテラル・フォース・デビエーション(以下、LFD)は、さらに以下の力に分解することができます。
  • コニシティ
  • プライステア

この記事では、コニシティとプライステアについて紹介した上で、クルマが左や右に流れる直接の原因についても書いていきます。

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タイヤに発生する力とは

コニシティやプライステアの話の前に、そもそもタイヤはどんな力を発しているのかをおさらいします。
  1. 重量を支えるための垂直方向の力
  2. 駆動力・制動力を路面に伝えるための前後方向の力
  3. 進路を変えるための横方向の力

このうち、車両の進路に影響するのは横方向の力ですね。
この力は、コーナリングフォース(CF)や横力と呼ばれます。

横力を考える上で重要なのが、タイヤのスリップ角、キャンバー角。
それぞれ、下の図で示すような角度のことです。

スリップ角は、タイヤの向きと車両の進行方向のずれを角度で表したものです。
ハンドルを切っても、クルマはタイヤの向きには進んでいないということですね。

キャンバー角は、天地方向に対してタイヤが車両にどんな向きで取り付けられているか、を表す角度のことです。
この記事では、ひとまずキャンバー角は0°として話を進めます。

横力とセルフアライニングトルク

続いて、タイヤに発生する横力とセルフアライニングトルクについて紹介します。

スリップ角に応じて横力が発生する

ドライバーがハンドルを操作してタイヤに舵角をつけても、クルマはタイヤの向きには進まず、タイヤにはスリップ角がつきます。

タイヤの横力は、このスリップ角に応じて発生します。
スリップ角が小さい時、横力とスリップ角は比例関係にあることが知られています。

スリップ角に応じてセルフアライニングトルクが発生する

横力は、進行方向に対してタイヤの後ろ寄りに発生します。

このため、横力はタイヤの中心軸まわりにモーメントを発生させます。
いわば“切れているタイヤをもとに戻そうとする回転力(モーメント)”です。

このモーメントのことを、セルフアライニングトルクといいます。
復元力、と表現されることもあります。

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ラテラル・フォース・デビエーション(LFD)

さて、ここからが本題です。

実は、タイヤというのは「まっすぐ転がしても横力が出る」のです。

「まっすぐ転がす」 = 「スリップアングルが0°」でも横力が出る、です。
この横力のことを、ラテラル・フォース・デビエーション(LFD)と呼びます。
英語で、横方向の力の偏差を意味します。

ここで、不思議に思われた方もいるかも知れません。
なぜなら前の章で、スリップ角に比例してタイヤに横力が発生する、と紹介したからです。

実は、正確にはそうではありません。
次に紹介する力が原因で、スリップアングルが0°でも横力が出るのです。

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コニシティ

コニシティの影響で、LFDが出ることがあります。
コニシティとは、タイヤの円錐形状によって発生する力です。

これはタイヤの構造を示したものです。
タイヤは様々な部品で構成されています。このうち⑥のベルトは、タイヤの外径が膨らむのを抑える役割があります。

ベルトの位置は中央に配置することを目標に製造されますが、工業製品である以上、どうしてもわずかながら左右のどちらかに寄ったものが出来上がります。

この結果、ベルトが寄った側は外径の膨らみが抑えられますが、反対側は空気圧で膨らみやすく、タイヤの左右で外径差が生まれるんです。

そしてタイヤは円錐状となり、横力が発生します。

この他、左右のサイドウォールの剛性差などでも円錐形状が発生します。

コニシティの発生する向き

コニシティは、タイヤを装着する箇所を左右で入れ替えると、クルマの進行方向に対して発生する方向が入れ替わるという特徴があります。

プライステア

プライステアとは、ベルトのコードの向きやトレッドパターンによって発生する力です。
コニシティとは異なり、こちらは設計者の意思で向きや大きさをコントロールすることもできます。

プライステアの発生する向き

プライステアは、タイヤを4箇所のうちどこに装着しても、進行方向に対して常に同じ向きに発生するという特徴があります。

NOTE
コニシティやプライステアの発生方向の特徴は
  • タイヤの回転方向と取り付け位置を変えた場合
  • タイヤの回転方向のみを逆にした場合
それぞれの条件によって、説明のされ方が異なります。
この記事では、前者の条件を前提に説明しています。
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LFDはコニシティとプライステアの合計である

話をもとに戻します。

スリップ角が0°のとき、つまりまっすぐ転がっているときに発生する横力であるLFDは、コニシティとプライステアの合力となります。

また、コニシティとプライステアは回転方向を入れ替えたときの特徴が異なりました。
以上の特徴から、両者はそれぞれ次のように計算することもできます。

  • LFD … コニシティとプライステアの合力
  • プライステア … 正逆回転それぞれのLFDの平均値
  • コニシティ … LFDとプライステアの差
(前略) スリップ角(図においてSAと略示する)αが0゜、キャンバー角βが0゜の場合におけるコーナリングフォースの平均値をプライステアとよび、各平均値からの偏差は、コニシテイ(CON)として定義される。タイヤの選別方法 より引用

図で表すとイメージしやすいでしょう。

そして、合力であるLFDが回転方向に依存するかどうかは、LDFのうちコニシティとプライステアのどちらが支配的かにもよります。

また、下の図は、コニシティとプライステアの発生確率のイメージです。
「発生確率」とは、大量に量産されたタイヤのなかからある一つのタイヤを選ぶと、そのタイヤのコニシティとプライステアがそれぞれどういう確率で発生するか、という意味です。

私達がタイヤを購入すると、コニシティは0付近のものの確率が高いものの、タイヤbやタイヤcのように右側や左側に出ているものある、というわけです。

プライステアも設計的に意図された値を中心にばらつきますが、その幅はコニシティのばらつき幅よりも小さい、と言われています。

Nominally identical radial tires from the same manufacturer will have relatively large, but narrowly distributed, values of ply steer, and relatively small, but broadly distributed, values of conicity.Prediction of ply steer and conicityより引用

あるタイヤを選ぶと、コニシティが大きくプライステアが小さいかもしれないし、その逆かもしれない。
結局のところ、LFDを知るためにはタイヤごとに横力を実測するしかありません。

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コニシティとプライステアのまとめ

この記事では、タイヤの発生する横力のひとつであるコニシティとプライステアについて説明しました。

これらの力は、クルマの横流れを対策する上で重要な意味をもちます。

こちらの記事で、クルマが横流れを起こす直接の原因と対策について書きましたので、併せてご覧ください。

【真因はタイヤの残留コーナリングフォース】直進したいのにクルマが左に流れる原因

お読みいただきありがとうございました。
しげでした。

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