クルマの整備の中でもハードルが低く、作業する機会の多いエンジンオイル交換。オイル交換だけは自分でやる、オイル交換くらいは自分でやる方、私の周りにも結構います。
しかし、たかがオイル交換、されどオイル交換。
作業不良によりオイル漏れをおこせば、重大な事故にも繋がりかねません。
「自己流でやっている」
「何度か作業経験はあるが、正しいやり方を知りたい」
「オイル交換の注意点を知っておきたい」
この記事では、そんな初級~中級者の方向けに、オイル交換で注意するポイント、設計者の視点でこだわってほしいポイントを紹介します。
この記事の著者 しげ 自動車好きの自動車エンジニア。 スポンサーリンクもくじ
オイル交換のおさらい
自動車整備の基本のひとつ、オイル交換。
やることは、古いオイルを抜き、新しいオイルを決まった量だけ入れる、なので、難しいことはありませんね。
やっていることは花瓶の水換えと変わりません。
しげ
正しく抜き、正しく入れる
作業としてはシンプルなので、難易度はそこまで高くありません。
オイルを抜くのは、上からでも下からでも、やりやすい方で。
上抜きの場合は、チューブがしっかり入って、安全に抜けるクルマだけにしましょう。
しげ
下から抜く場合は、オイル処理パックやトレーをセットして、ドレンボルトを外せばよいですね。
重要なのは、水平な場所で作業するということ。
車体が傾いていては設計時の想定通りにオイルが抜けないですし、何より危険です。
より良く抜けるようにと、クルマの片側を持ち上げて傾ける方もおられるようです。
しかし、どう頑張っても全量のオイルは抜けないので、ここはあまりこだわらなくても良いです。
また、トランスミッションなど、他のオイルを抜いてしまわぬように注意しましょう。
エンジンのドレンボルトの近くにトランスミッションのドレンボルトがあることもあります。
オイルはマニュアルに沿ったものを入れる
エンジンオイルは指定のものが望ましいですが、オーナーズマニュアルに書かれている規格やグレードを守れば、どんなものでも良いです。
しげ
油種を変えるなんて話がでようものなら、効果はどれほどなのか?オイルの中の成分が部品に悪さをしないか?などの机上検討や、それを証明するテストを、とてつもない量のリソースを注いで行わなくてはなりません。
それだけ、純正オイルは部品に悪影響をあたえないという裏付けの取れたものなのです。
設計者の私がかならずやっていること
整備に欠かせないサービスマニュアルは、設計部門とサービス部門の間で内容が検討されます。
最終的に書かれる内容は、技術的な正義だけでなく、作業性も十分に考えられたもの。
技術的な理想を追求していたら、どんなに時間があっても足りなくなってしまいますからね。
余計な工数が発生しないように、可能な限り作業は簡素化します。
しげ
オイル交換ひとつとっても、設計者としての理想を追求したくなります。
油量は中央狙い
オイル交換時の油量といえば、普通はレベルゲージの上限を狙うのが一般的です。走行に伴って減ってしまう分を見込んで、多めにいれておきたいからですね。
しげ
ところが、油量が多いほどエンジンの中でかくはん抵抗が増えてしまいます。
だから私は上限までオイルを入れません。
しげ
では、油量は少なければよいのか?
そんなこともありませんね。
油量が少なすぎれば、エンジンオイルの役割であるエンジン内部の洗浄や冷却に影響がでてしまいます。
旋回時にオイルが偏り、ストレーナからエアを吸って油圧に異常が出るリスクもあります。
しげ
そこで落ち着くのが、設計の中央値。
エンジンの開発時は、まず理想的な油面高さを設定して、そこから上限と下限を設定しています。
したがって、設計時の真の狙いは、まぎれもなくレベルゲージの中央なのです。
オイルレベルが、レベルゲージの上限と下限の真ん中に来るように油量を調整することをオススメします。
ワッシャの向きはつぶれやすい側をオイルパンに向ける
もうひとつ私がこだわるのが、ドレンワッシャの向きです。
しげ
基本的な考え方は、ワッシャのつぶれやすい側をオイルパン側にすることです。
理由は、オイルパンとワッシャの間の密着度を上げるためです。
そもそもワッシャのつぶれやすい側とは?
「ワッシャのつぶれやすい側」とはどちら側でしょうか?
ワッシャはアルミの板からプレスで打ち抜いて作るため、角が丸い表側と、とがっている裏側が存在します。
つぶれやすいのは、表側。
ワッシャの角がなだらかな方が接触面積が小さいため、面圧が大きくなり、よりつぶれやすくなります。 反対に、ワッシャの角が立っている方が接触面積が大きいため、面圧は小さくなり、よりつぶれにくいのです。
しげ
したがって、ダレ側のほうが接触する相手部品のうねりや凹凸を吸収できるので密着度が上がり、シール性が向上します。
オイルパンの座面はうねっている!
では、ドレンボルトと接触するドレンドルトとオイルパンは、どちらがうねりや凹凸があるでしょうか?
答えは、オイルパン側です。
特に、黒く塗装されている鉄のオイルパンではドレンボルトの座面が加工されておらず、うねりが発生していることがあります。
座面の加工が施されたものでも、走行中についた汚れやゴミがあたった衝撃などで、凹凸が発生していることがある。
そんなわけで、ボルト側よりもオイルパン側のほうがワッシャの接触面に凹凸やうねりがあるのです。
ワッシャの表裏でつぶれ方の差は微々たるものだというご意見や、ボルトとオイルパンそれぞれの座面の仕上がりによる!というご意見もあるでしょう。
それもごもっともですが、しかしこれはあくまでも、面のうねりの可能性に基づく考え方です。
どちらを向けて取り付ければよいのか迷ってしまう方には、ぜひおすすめしたい取り付け方です。
私はいつもこの思想で、ダレ側をオイルパンに向けて取り付けています。
ボルト座面は必ずドライ!
最後に紹介する注意点は、ボルト座面はかならずドライにしましょう!ということです。
ドライとは、ドレンボルトの座面やワッシャにオイルや水が付着しておらず、完全に乾いた状態のことです。
ドレンボルトを締め付ける際は、
を確認しましょう。
オイルが付着していると、小さいトルクでボルトが締まってしまい、最悪の場合オイルパンのめねじをねじきってしまう恐れがあります。
もしオイルが付着しているようなら、こうしましょう。
- ドレンボルトにワッシャをセットする
- ドレンボルトをオイルパンへ軽くねじこみ、オイルパンからオイルが出てくるのを止める
- オイルを止めたらパーツクリーナでドレンボルト座面を脱脂
注意しなくてはならないのは、パーツクリーナで脱脂すると、結露で座面に水が付着することです。
脱脂してすぐ締めると水で濡れた状態でトルクを掛けることになってしまいますので、理想はボルトが常温に戻ってから水滴を拭き取り、本締めすることです。
ボルト座面には、オイルも水も残らないようにしましょう。
こんな作業は面倒に感じるかもしれませんが、長くクルマを維持したいならこだわりましょう。
しげ
ちなみに、トルクレンチは必ず使いましょう。
工具の持ち方や自分の姿勢によって、力のかかり方は大きく変わります。どんなに経験を積んでも手の感覚など当てになりませんよ。
スポンサーリンクまとめ
この記事では、クルマ設計者のオイル交換【サービスマニュアルには書かないけど自分ではこうする】について書きました。
- 油量は中央に合わせましょう
- ワッシャの向きがわからなければつぶれる側をオイルパンと接触させましょう
- ドレンボルト座面はドライで!
しげ
お読みいただきありがとうございました。
楽しいカーライフを!
しげでした。
スポンサーリンク