マニュアル車のドライバビリティが良い理由

MT車はドライバビリティ=操縦性が高いと言われています。
AT車より操作が多いのに、なぜでしょうか?
実は、その操作の多さが優れた操縦性に関係しているのです。

この記事の著者
しげ
自動車好きエンジニア。
変速機の開発経験あり。MT車のドライバビリティについて技術的な観点も交えて説明します。

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車の走りをつかさどる駆動力

まずは簡単な話から。

駆動力とは、タイヤが路面に伝える力のことで、車が走るためには、駆動力が必要です。

当然のことですね。

走るためには、と書きましたが、
もう少し正しく書くと、車を加速させたり、定速で走らせたり、減速させたりするために駆動力が必要なのです。
(最近の高性能車は、コーナを曲がりやすくするためにも駆動力を使っている)

この加速、クルーズ、減速は、

  • 交通の流れに乗ったり
  • 軽快にワインディングを走ったり
  • サーキットでスポーツ走行したり

など、あらゆるシーンで繰り返されています。

そしてこの駆動力は、常に適切かつ緻密にコントロールされています

例えば、駆動力を弱、中、強のように3段階しか選べなかったらどうでしょうか。
そのときの状況によって必要な駆動力はさまざまなので、
3段階しか選べなければとても交通の流れにのって走ることはできませんね。

前走者と適切な車間距離を保って走ったり、しっかり加速して合流したりなど
車として当たり前のことができなくなってしまいます。

駆動力は可能な限り細かく、緻密にコントロールできなくてはなりません。

駆動力を決めるのはエンジントルクとレシオ

それでは、駆動力を決めるのは何でしょうか

駆動力の源は、エンジントルク。
そのエンジントルクを変速機が増幅して、タイヤに伝える。
このタイヤに伝わったときの力が、駆動力ですね。

変速機が増幅する量は、変速機のレシオ(=何速を選んでいるか)で決まる。
1速ほどレシオは高く、5速や6速など高い段ほどレシオは小さくなります。

駆動力は
  • 力の源であるエンジントルク
  • エンジントルクの増幅量を決めるレシオ(=何速を選んでいるか)

で決まります。

つまりドライバーは駆動力をコントロールするためにエンジントルクとレシオをコントロールしている、といえます。

では、エンジントルクとレシオはどうやってコントロールするか。
ここでようやく、MT車とAT車の違いが出てきます。

MT車とAT車の違い

結論から行きましょう。
次の表をご覧ください。

MT車 AT車
エンジントルク アクセルペダルで コントロール アクセルペダルで コントロール
レシオ ギヤチェンジで コントロール アクセルペダルで コントロール

MT車もAT車も、エンジントルクをコントロールするのはアクセルペダルです。
アクセルを踏んだ量に応じで、エンジントルクが出るのからです。
(※正確にはエンジントルクは回転数で変わりますが、エンジン=等トルク機関として、ここではトルク一定で考えています)

一方でレシオは、MT車では車速やほしい駆動力に合わせてドライバーが選択しますが、AT車ではアクセルの踏み込み量と車速に応じで車が選択します。

このように、MT車はトルクとレシオを独立して操作できるのに対して、AT車はアクセルペダルでしか操作できません。
言い換えると、AT車はアクセルペダルでトルクとレシオのどちらも変化してしまうのです。

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駆動力をコントロールしやすいのはMT車

すばり、駆動力をコントロールしやすいのはMT車です。

MT車はシフトを操作してしまえば、アクセルペダルの操作だけで駆動力をコントロールできるからです。

一方でAT車はどうでしょうか。
アクセルペダルを操作するとエンジントルクもレシオも変わる。

操作するものが一つしかないので簡単に感じるかもしれませんが、AT車はアクセルだけでトルクもレシオも変わってしまうので、アクセルを踏んだときの駆動力が予想しにくいのです。

MT車とAT車の違い

たとえば今、3速で一定速度で平らな道を走っていて、上り坂に差し掛かったとします。

この速度を維持したいので、ドライバーはもうすこし駆動力が欲しくなる。
坂道をのぼるのに十分な駆動力を出さなくてはなりませんね。

ここで、MT車のケースとAT車のケースを考えてみます。

MT車はとりあえずギヤを4速のままで、アクセルを必要な駆動力がでるまで踏み込めば良い。
ドライバーは 「それぞれのギヤで、このくらい踏めばこのくらいの駆動力が出る」 ということを経験上わかっているので、アクセルの操作量をつかみやすいのです。

しげ

では、AT車はどうでしょうか?
先にも紹介したとおり、アクセルを操作するしかないので、アクセルを踏み込みます。
さて、どのくらい踏めばよいでしょうか…?

実は、AT車はこの感覚がつかみにくいのです。

これは車ごとのセッティングによって、どのアクセル開度で何速を選択するかが異なるからです。 図のように、アクセルペダルを踏みたせば3速や2速へ変速してしまうかもしれない。

アクセルを踏み込んで行けば駆動力はでますが、アクセルを踏み込む量は探り探りになってしまいます。

こればかりはその個体のAT車を経験して、アクセルを踏んだり戻したりして駆動力を調整しながら探っていくしかないのです。

しげ

なお

MT車でもそうなんじゃないの?
もちろん、初めての車ではMT車であっても難しいよ。 でも、MT車とAT車を比較すれば、MT車のほうがコントロールできるんです。

しげ

ドライバは無意識にほしい駆動力を意識しています。
そのためにアクセルペダルを踏んだり戻したりして駆動力を探るAT車よりも、ドライバーが、これくらい操作ならこれくらいの駆動力がでるだろうな、と予測しやすいMT車は操縦性が高いと言えます。

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行く先を見据えた操作や緻密な駆動力コントロールも可能

MT車は、行く先を見据えた操作や緻密な駆動力コントロールも可能。
緻密な駆動力のコントロールにも向いています。

例えば、サーキットやワインディングでのスポーツ走行。

  • 次のコーナにいつたどり着いて、そのあとの加速がいつ頃くるか
  • そのときにほしい駆動力はどのくらいか

など、ドライバーは先を予測しながらドライビングをしています。
ドライバーが思い描く通りの駆動力を得られるMT車は、こういったシーンで合理的。

パドルシフトの登場によってAT車も高いドラびりをもつようになりましたが、MT車が未だに支持されるのはこのような理由から。
そもそもパドルシフトはMT車の操縦性をめざしたものです。

また、MT車は緻密な駆動力コントロールも得意です。
先程の線図をもう一度みてみましょう。

例えば4速定速走行 → ゆるやかな登坂にさしかかる。
前走者に遅れず、後続車には煽られず、駆動力をコントロールしたい

こんなときMT車は、アクセルを大きく踏んでコントロールすることができます。
アクセルを大きく踏んでも駆動力の変化が小さければ、ドライバーは駆動力をコントロールしやすいのです。

さらにこのポイントは、大きなエンジントルクを使えます。
トルクを使って走ることで、ドライバーは車が力強い走りをしていると感じることができるのです。

ヨーロッパでMT車が合理的な理由【交通環境と人の好みから考察】

一方、AT車であれば、ここまで深く踏むとダウンシフトしてしまうでしょう。 アクセルペダルを大きく踏んだので、車が「ドライバーは大きな駆動力がほしいのだ」と判断するからです。

図の通り、低いギヤになるほどアクセルを狭い範囲でコントロールしなくてはいけなくなり、 コントロールの難易度が上がっていきます。

まとめ

  • 駆動力は車の動きをつかさどる
  • 駆動力を決めるのはエンジントルクとレシオ
  • MT車はアクセル操作したときの駆動力を予測しやすい
  • MT車は緻密な駆動力コントロールも得意

MT車は操作こそ多いものの、車を走らせる上で重要な駆動力を精細にコントトールできることが強みなのです。

お読みいただき、ありがとうございました。
しげでした。

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