ヨーロッパでマニュアル車が合理的な理由【交通環境と人の好みから考察】

自動車といえば、日本ではオートマ車の割合がかなり高いですが、ヨーロッパでは今だにマニュアル車が主流です

なぜでしょうか。
本記事ではヨーロッパの多くのドライバーがマニュアル車を好む理由について、ドライバーの好みと、交通環境の観点から考察します。

この記事の著者 しげ
自動車好きエンジニア。
変速機の開発経験あり。
ヨーロッパにも滞在していたこともあり、街中からワインディング、アウトバーンまで3万キロの運転経験があります。

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ヨーロッパの道路事情

はじめに、ヨーロッパの道路事情から紹介していきます。

時速○キロオーバーでアウト!?厳しい速度取締り

ヨーロッパは日本と異なり、ヨーロッパは速度制限に対する取り締まりがとても厳しいです。

例えばドイツであれば、速度制限を5キロも超えていればスピードカメラに撮影され、罰金を支払う必要がある。
特に街中では罰則が厳しく、同じレベルの速度超過でも郊外より高い罰金が課せられてしまいます。
罰金だけならいいですが、速度超過が時速21キロを超えると1ヶ月の免停となってしまう。
日本ではとても考えられませんね。

ドイツを始めとしたヨーロッパ諸国では、速度制限を厳格に守らなくてはならないのです。

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【ドイツでの運転】スピード違反をしないために気をつけるべきシーン5選

速度制限を守っていても煽られる?

そういった速度超過に対する厳しさは事前に聞かされていたので、私は絶対に制限速度を超えないように運転していました。

しかし、ここからがドイツのいやらしいところ。
制限速度を守っていても、後続車に煽られてしまうのです。

50km/h制限のところを45km/hで走れば遅すぎて煽られる。
46, 47, 48と速度を徐々に上げる。
それでも後続車は詰め寄ってきます。
たとえ50km/hで走っていても、です。

50km/hで走っていても煽られる。
しかしスピードカメラが光る速度は55km/hほど。
だから51とか52km/hで走りたい。
ヨーロッパのドライバーは、こんな狭い範囲で速度をコントロールしたいのです。
そんな厳しいことがあるか?と思われるかもしれませんが、しかしこれが事実です。

ちなみに慣れた道でスピードカメラが無いとわかっていれば、もっと速度を出すよう要求されることもあります。

このように、ドイツでは速度違反をせずかつ煽られず、とするために
ドライバーは精度の高いスピードのコントロールをしたいのです。

日本とは、ドライバーの意識が決定的に異なります

目まぐるしく変わる交通状況

そしてこの速度制限が目まぐるしく変化するのもヨーロッパの特徴

戦後、街を計画的に発展させてきたドイツでは、街と郊外が標識を堺に明確に別れています。

道路を走るドライバーの目線から見ると、道路脇に家の密集した街と、道路脇には何も建物が立っていない郊外路に分かれており、それぞれで速度制限が異なる。
そしてこれが、頻繁に繰り返されるのです。

例えば、次のような感じです。

  • 街中50km/h制限
  • 街終わりの標識(50km/h制限解除)
  • 郊外路時速100km/h制限
  • 街始まりの標識・50km/h制限開始
  • 30km/h制限
  • 50km/h制限
  • 街終わりの標識(50km/h制限解除)
  • … といった具合です。

    制限が変わるたびに加速や減速をし、その速度にたどり着いたら緻密に速度コントロールをする
    これがヨーロッパのドライバーが行っている運転なのです。

    アウトバーンの走行

    そして、忘れてならないのがアウトバーンですね。
    アウトバーンはドイツだけでなくスイス、オーストリアにも存在します。
    その中でもドイツのアウトバーンは、速度無制限であることは日本でもよく知られているのではないでしょうか。

    ただし、アウトバーン=速度無制限、ではありません。
    実はアウトバーンにも速度制限区間があり、その割合は総延長の半分ほどを占めます。
    制限速度は80km/h, 100km/h, 120km/hなどがよく見かけるものです。
    速度無制限であるのはそれ以外の区間のみ。

    つまり、アウトバーンは好き勝手に高速で運転できるものではなく
    速度制限区間では市街地や郊外路と同様に、緻密な速度コントロールが求められるし、
    速度無制限区間との境では、適切なタイミングで十分な加速や減速を行うことが必要なのです。

    そんなとき、車にはただちに反応してほしい、というのがドライバーの心理です。

    ドライバーの特徴・好み

    低回転・高トルクを使いたい

    ヨーロッパでは、ドライバーの好みにも特徴があります。
    それは、低速から力強いトルクが出るエンジンの特性を活かして運転するドライバーが多いということ。

    エンジンを高回転まで回して走るより、低回転でアクセルを開け、エンジンを唸らせながら走ることに気持ちよさを感じるのです。
    低い音と体に響く心地よい振動は、彼らにとってエンジンの力強さを感じさせるものです。

    ディーゼルエンジンはこのような特徴がよく表れていて、ドライバーとの好みともマッチするのでヨーロッパで人気を集めてきました。

    マニュアル車を操ることのハードルが低い

    余談となりますが、ドイツ人の知り合いに話を聞く中で、マニュアル車、オートマ車については次のような意識も垣間見えます。

    車=マニュアル車でしょう
    なにもオートマ車までいらないでしょう

    これらは、そもそもマニュアル車に乗る人が多い環境で生活しているために持っている意識。
    免許をとって車を運転するということは、すなわちマニュアル車を操ること、と考えるのが自然だということです。

    なにもオートマ車までいらないでしょう、という認識もしかり。
    最近はヨーロッパでもオートマ車が増えてきたので、こういった感覚は減少傾向にあるそうですが、自動だったら便利だけど、自分でやっても苦ではない、というのがマニュアル車に対する感覚とのこと。

    車に全く興味がないドイツ人の知人がオペルのアストラの新車を買ったというので話を聞くと、変速機はマニュアルを選んだとのこと。
    理由を問うと、安かったから、とただそれだけ。

    マニュアル車に抵抗はないかと聞けば、

    「得意とか苦手とか、好きとか嫌いとか以前に、何も感じない」

    が彼の答えでした。

    車に興味がないヨーロッパのドライバーにとって、

    自動だったら便利なのかもしれないけど、そこまでこだわる理由がないからマニュアル車でいい

    、というのが、潜在的な意識のようです。

    極端な例でいえば、車に自動の変速機なんて、家に自動ドアをつけるような感じ。

    しげ


    なお

    いやいや、手で開ければいいじゃんwってことね

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    ヨーロッパでマニュアル車が合理的な理由

    以上のようなヨーロッパの道路事情とドライバーの好みに焦点を当てると、なぜマニュアル車が好まれるのか、理由が見えてきます。

    道路事情とマニュアル車のマッチング

    先に紹介したように、ヨーロッパのドライバーは

  • 低速から高速まで、目まぐるしく変わる交通状況に合わせて運転したい
  • 緻密に速度をコントロールしたい
  • でしたね。

    こんな運転をするためには、ドライバーの意思に遅れることなく反応し、駆動力や速度のコントロールしやすいマニュアル車が合っているのです。

    マニュアル車であれば、加速したいポイントに合わせて事前に駆動力を出す準備しておくことができるし、緻密に駆動力を操って速度をコントロールできる。

    これが、ヨーロッパの道路事情とマニュアル車がマッチする理由と考えることができます。

    関連記事

    >>【変速操作だけでない!】マニュアル車が楽しいと感じる3つの理由

    >>マニュアル車のドライバビリティが良い理由

    ドライバーの好みとマニュアル車のマッチング

    ドライバーの運転の好みからも、マニュアル車が受け入れられている理由を考えることができます。

    ヨーロッパのドライバーは、低回転で高トルクを使える運転が好きでしたね。
    これは言い換えると、高いギヤでアクセルを深く踏んで運転することです。

    こんな運転ができるのも、他でもないマニュアル車。

    エンジン回転数はシフト操作で、エンジントルクはアクセルペダルで自由に選択できますから、ヨーロッパのドライバーが好きななポイントで運転できるのです。

    オートマ車はどうかといえば、アクセルを深く踏むと低いギヤに変速し、エンジン回転が高くなってしまうことがあるので、 マニュアル車に比べると上記の運転がしづらいといえます。

    詳しくはこちらに書きました。
    >>マニュアル車のドライバビリティが良い理由

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    まとめ

    • ヨーロッパでは的確に駆動力をあやつりたい道路事情がある
    • ドライバーは低回転・高トルクで気持ちよく走りたい
    • マニュアル車の特性はヨーロッパの道路事情・ドライバーの好みにマッチする
    でした。
    僕も、大きなエンジントルクを使って走るのが好きです

    しげ

    お読みいただきありがとうございました。
    しげでした。

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