新型Cクラス(W206)が、6月末に日本でも発表されました。
先行で発表・発売をむかえるドイツから、新型Cクラスについての印象や評価を紹介します。
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もくじ
モデルの概要
Cクラスの始まりは、1982年。
燃費規制をクリアするために北米市場に投入し、Baby-Benzとしてヒットした190(W201)が前身です。
Dセグメントのベンチマークであり、ダイナミクス性能や快適性、安全性などにおいて、ライバルメーカが常に意識して指標とするモデルであり、今回のモデルチェンジで5代目となりました。
デビュー時から快適性は上位グレードと遜色ないと評価され、Small S-Classとの別名もあります。
その別名はあながち間違いではなく、今回のモデルチェンジではフラッグシップモデルのSクラス譲りの新技術も多数採用。
安全運転支援システム、縦型の大型センターディスプレイ、ARナビゲーション、生体認証によるシートポジション等の設定、片側130万画素を誇るDIGITALライトによる効果的な夜間の視界確保や、良好な取り回しや優れたハンドリングを実現するリア・アクスルステアリングなどの技術だけでなく、外観・内装のデザインにもSクラスのエッセンスを取り入れ、Cクラスでありながら堂々とした雰囲気も併せ持っています。
全モデルが電動化されたことも今回のモデルの特徴です。
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デザイン
Mercedes
短いフロントオーバーハングと長いホイールベース、そしてリアオーバーハングの組み合わせによって、メルセデスらしい立派なサイドビューがますます洗練されました。
しげ
なお
ウインドスクリーンとキャビンを大きく後方に置くことで、Cクラスらしい、伝統的でありながらスポーティなプロポーションとしています。 そして、先代モデルと比較し全幅の拡大は10mm小さく、全長は65mm拡大されました。 「SensualセンシュアルPurityピュリティ(官能的純粋)」というデザインの基本思想に基づき、ラインやエッジを大幅に削減し、曲線を描く彫刻的な面により、特殊な陰影を生み出しています。
これは日本向けプレスリリースからの引用ですが、まさにこの通り。
メルセデスもこの伝統的かつセダンの標本となるべきデザインに、誇りを持っているということです。
しげ
フロントからリアまで貫かれたショルダー部のラインは「キャットウォークライン」と言う愛称で、車高を低く見せる効果があるとのこと。
Mercedes
ヘッドライトは、新型Sクラスのような雰囲気で、先代よりも知的な印象となりました。
ラジエーターグリルの中央にはスリーポインテッドスターが採用されています。
AMGラインでは一部フロントのデザインが異なります。
グリルの形状は下部が広がる台形型の「Aシェイプグリル」が採用され、スリーポインテッドスターが無数に散りばめられているのが特徴。
フロントバンパーもロア側のダミー開口部が広がり、より迫力のあるデザインが採用されています。
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リアエンドは、三角形で横に長い特徴的なデザインの2分割型のテールランプを採用し、ワイドでシャープに印象をあたえるデザインになりました。
こちらも新型Sクラスと似た雰囲気ですが、Cクラスのほうがやや若さがありますね。
Mercedes
インテリアデザインについても新型Sクラスの要素を取り入れつつ、Cクラスらしいスポーティさをも演出されたとのこと。
Mercedes
ダッシュボードと縦型の11.9インチのメディアディスプレイは6度ドライバー側に傾いています。
プレスリリースには航空機の翼やエンジンのデザイン要素を取り込んだとあり、近未来的なイメージを印象づけるデザインを意識しているよう。
Mercedes
AMGラインではステアリングのデザインが異なり、左右、中央のそれぞれのスポークがそれぞれツインスポークとなります。
シートの調整スイッチやドアハンドルが配置されたフロントドアのパネルはドア表面から浮き上がるようなデザインで、アンビエントライトの照明によって上質感も演出します。
室内を彩る「アンビエントライト」も改良され、64色から選択可能で、単色の発光に加えて色の連続変化も可能。
エアコンディショナーの温度設定に連動して、青や赤に色が変化します。
Mercedes
先代に対して、ホイールベースは25mm、後席レッグルームは21mm、ヘッドルームが13mm拡大され、後席の居住性が向上しています。
Mercedes
スポンサーリンクテクノロジー
パワートレイン
Mercedes
新型Cクラスのエンジンバリエーションは、次の通り。
- ”M254” 1.5L 直列4気筒ターボエンジン 150kW (204PS) + ISG
- ”M254” 1.5L 直列4気筒ターボエンジン 150kW (204PS) + プラグインハイブリッド
- ”OM654M”2.0L 直列4気筒ディーゼルターボエンジン 147kW (200PS) + ISG
ISGは”Integrated Starter-generator”の略で、エンジン始動用モータがエンジンアシストや回生ブレーキの機能も兼ねたハイブリッドシステム。
このCクラスでは、業界では「P1」と呼ばれる、エンジンと変速機の間にモータを配置する構造がとられています。
低速時の力強いトルクによるアシストだけでなく、変速時のトルクの谷を埋めて乗り心地を改善したり、回生ブレーキやコースティングで燃費の向上を図られました。
しげ
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一方のプラグインハイブリッドは、最大トルク440Nm、最大出力95kW (129PS)のモータが、1.5L 直列4気筒の過給エンジンと組み合わされます。
25.4kWhの大容量バッテリと回生ブレーキなどのおかげで、電気のみで走行できる距離は100kmを達成しています。
インテリジェントドライブ
今回のモデルチェンジのメインの訴求ポイントであるインテリジェントドライブ。
先代に対して、以下の機能はより多くの条件で作動するようになりました。
- アクティブステアリングアシスト
- アクティブエマージェンシーストップアシスト
- アクティブブレーキアシスト
- 緊急回避補助システム
- アクティブレーンキーピングアシスト
- アクティブブラインドスポットアシスト
ユーザインターフェースが次世代型に
ドライバーとクルマの接点であるインターフェースは、まさに今どきの車となりました。
MBUX(メルセデス・ベンツ ユーザー エクスペリエンス)はこのCクラスにも採用され、”Hi, Mercedes”の声に反応。
なお
指紋や声などの生体認証によるシートポジションの設定にも対応していて、ペアリングした携帯電話の情報などと合せて設定を保存することも可能です。
ARナビゲーションは、車両前方の景色がナビ画面に映される技術。
地図での図示よりも直感的にナビの案内を理解しやすくなりました。
リア・アクスルステアリングで小回りと高速安定性を両立
新型Cクラスは、ステアリング操作によって、フロントタイヤだけでなくリアタイヤにも舵角が付きます。
その角度は最大2.5度。
60km/h以下の停車速域では、後輪が前輪と反対方向に切れることで、高い小回りの性能を実現しています。
メルセデスによると、一方で60km/hを超える領域では、前輪と同じ方向に舵角がつくことで、安定性とハンドリング性能を両立させる、としています。
Cクラス(セダン/ステーションワゴン)」を発表 スポンサーリンク
グレード
新型Cラクスのグレードは、次のとおりです。
モデル | エンジン | ボディタイプ |
C 200 アバンギャルド | 1.5L 直列4気筒ターボ | セダン |
ステーションワゴン | ||
C 200 4MATIC アバンギャルド | 1.5L 直列4気筒ターボ | セダン |
C 220 d アバンギャルド | 2.0L 直列4気筒ディーゼルターボ | セダン |
ステーションワゴン | ||
C 350 e アバンギャルド | 1.5L 直列4気筒ターボ+プラグインハイブリッド | セダン |
セダンは4バリエーション、ステーションワゴンは2バリエーションから選択可能です。
プラグインハイブリッドは最上位のC 350 e アバンギャルドでのみ選択可能。それ以外はISG全バリエーションISG付きとなります。
レビュー
雑誌のレビュー、SNS上のコメントを、本国ドイツから紹介します。auto motor und sport
ドイツのamsから、Cクラスのインプレッションを紹介します。
まずは、Cクラスと4気筒エンジンの組み合わせについて。
この組み合わせはあまり調和しているとは思えない。 ブリキのような音、ギクシャクしたパワーデリバリー、加えて、不必要に頻繁に2つのギアを戻したり上げたりするオートマチックは、車内に落ち着きのなさをもたらしている。 Liebling, sie haben die S-Klasse geschrumpftより引用
エンジンの与える上質さについては、期待を下回る印象であったようです。
オートマチックトランスミッションの変速の仕方についても不満が残ったようですが、メルセデスは欧州勢の中でもアクセルの踏みこみに対してレスポンスや快適性を重視する傾向にあるため、これはセッティングがドライバーの好みにマッチしていないだけかもしれません。
ディーゼルエンジンを搭載したプラグインハイブリッド車や、残念ながら6気筒や8気筒を持たないパワフルなAMGの派生モデルは、その後に登場します。 Liebling, sie haben die S-Klasse geschrumpftより引用
さらっと、「残念ながら」6気筒や8気筒がないと書かれています。
多気筒エンジンに対する期待の現れでしょう。
エンジンに関する談義は下火になりつつありますが、熱狂的なファンが一定数いるのも事実ですね。
シャシーに関しては、快適性能はメルセデスらしくクラス最高水準のレベルを維持している。
それでいて、今回の新型Cクラスは俊敏さも向上させている点が取り上げられています。
サスペンションの快適性にこだわる方は、オプションのアダプティブ・ダンパーで十分だと思います。 それは、サスペンションの快適性の面での妥協を意味するのでしょうか?そうではありません。 コンフォートモードでは、ステーションワゴンは段差や短い波を、明らかに波打つように受け止めます。 着飾りすぎている?ではスポーツモードに切り替えましょう。依然としてBMW3シリーズやAudi A4をはるかにしのぐ、高いレベルのサスペンションコンフォートが保証されます。 Liebling, sie haben die S-Klasse geschrumpftより引用
リア・アクスルステアリングについても高評価を得ています。
しげ
総評は次のとおりで、好印象を得ています。
新しいコックピットとオプションのリアアクスルステアリングにより、W 206はSクラスの中級モデルとしての存在感を示し、さらに重要なことに、本物のベンツであり続けることができました。 形状、快適性、スペース、実用性は最高です。つまり、5代目は私たちにとって、このクラスの絶対的なベンチマークでもあるのです。 Liebling, sie haben die S-Klasse geschrumpftより引用
ちなみに、同ページの読者アンケートは次の通り。
回答数は7054件で、次のような結果でした。
引用元:Liebling, sie haben die S-Klasse geschrumpft
やはり皆さん明確なCクラス像をお持ちのようで、それぞれの価値観と新型Cクラスを照らし合わせた結果がこれです。
Dセグメントの絶対的ベンチマークには、控えめな変化を望む保守的な方が多いようですね。
皆さんの目には、どのように写ったでしょうか。
Auto Bild
ドイツの雑誌AutoBildですが、彼らは発売前にプロトタイプをテストしています。
シャシー性能については、スポーティなキャラクターであるBMWを引き合いに出して、次のようにレビューしました。上で紹介したamsの言うような、快適性を備えながら実現された運動性能には期待が高まりますね。
インテリアに関してはSクラスと似ている点が多いことや、遮音材による風切り音の低減が功を奏していることに触れた上で、ダイナミクス性能について次のように述べています。 CクラスのテストドライバーであるChristof Kühnerは、まるでAMGに乗っているかのように、ステアリングを少し動かすだけで快調にカーブを曲がっていきます。”このドライブは、ダイスのように素晴らしく真っ直ぐで、私の思い通りに動いてくれる “とエンジニアは言うのです。メルセデスはBMWの3シリーズに星をつけて作ったのか?製品版が発表された後にテストしてみます。So agil war die Mercedes C-Klasse noch nie: erste Mitfahrt im Prototypより引用
ところで今回のモデルでは、エアサスペンションがオプションで選択できなくなりました。
これが快適性にどのように影響したかについて、次のように触れられています。
コンフォートモードでは、ボディがまるで綿毛の上に乗っているかのように見え、先代ではオプションだったエアサスペンションを彷彿とさせます(プラグインハイブリッド車ではリアアクスルにのみ標準装備)。非常にソフトな基本セッティングは、アウトバーンでの高速走行時には少し揺らいで見えますが、問題ありません。スポーツポジションでは再びグリップが向上し、ベンツは快適性を犠牲にすることなく路上でより快適になります。深い段差がある場合にのみ、スプリングの吸収能力が、オプションで用意されていた旧型のエアマティックには及ばないことがわかります。 So agil war die Mercedes C-Klasse noch nie: erste Mitfahrt im Prototypより引用
コンフォートモードではエアサスに匹敵する十分な快適性があることがレポートされています。
高速安定性に関する懸案もありますが、日本での実用性にはほぼ影響しないでしょう。
その他、新技術の前輪操舵や、アクセルベダルの反力もしっかりしたものであると、実用性や操作系において高評価を得ていました。
総括としては、次のように表現されています。
新型Cクラスは、Sクラスの操作性、快適性、リアアクスルステアリングによる優れた運転操作性を備えており、印象的である。これでもミドルクラスなのか?広さには賛成だが、価格には反対だ。 So agil war die Mercedes C-Klasse noch nie: erste Mitfahrt im Prototypより引用
価格についてのコメントがありましたが、頻繁に対比されるSクラスに比べれば、半分ほどです。
積極採用されたSクラスのエッセンスが気に入ってしまえば、、むしろお買い得とも言えるかもしれません。
MOTOR TALK
ドイツのMOTOR TALKから、ファンの声を紹介します。
デザイン
まずはデザインについて。
といった具合に、変化に対して否定的な意見がちらほら。
参照した投稿はこちら(要ユーザー登録)
一方で、すでにW205が古臭く見えてしまうという人も。
この方はスーパーデザインという言葉を使って、新型Cクラスのデザインを褒め称えています。
参照した投稿はこちら(要ユーザー登録)
今回のCクラスの登場で、Eクラス、Sクラスとともに、新世代のメルセデス顔がそろいました。
メルセデスの顧客は社会的地位が中級から上級であり、これらのユーザーは保守的な考え方の人が多いのもの事実。
デザインについては賛否あるのが時の常ですし、好みに依るところが大きいので、あまり神経質になる必要はないでしょう。
Mercedes一方で、インテリアについては支持するコメントが多数見受けられました。
といった投稿のほか、MBUXや大型のディスプレイは素晴らしく、このクラスのベンチマークであるというコメントもあります。
センターコンソールに木がないのは本当に残念です。(以下略) W206, who is ordering?より引用
ウッドパネルを惜しむコメントも見られますが、内装については概ね好評です。
パワートレイン
6気筒以上の他気筒エンジンがなくなったことや、マイルドハイブリッドシステムに関する意見です。
ということで、全モデルが4気筒エンジンであることに関しては、そこまで神経質ではない雰囲気です。
今回のモデルチェンジでトルクと出力を大幅に向上させたISGは好印象のようで、これによって向上するアクセル踏み込み時のレスポンスや低回転域のトルクに期待しているようです。
ただし同時に、依然としてターボラグが気になる、というコメントも見受けられました。
普段からNAエンジンに乗りなれているユーザには気になるところかもしれませんが、しかしながらモータのトルクは向上しているし、ベルト駆動からダイレクト駆動へシステムが代わっていることを考えると、先代のCクラスに対してはレスポンスの点で大幅に進化があるでしょう。
YouTube
まとめ
Mercedes
この記事では、【Mercedes-Benz】C-Class W206 レビュー【ドイツ人の評価を紹介】について書きました。
- 依然としてDセグメントのベンチマークである
- ブランド内の立ち位置はエントリーSクラス
- 快適性・実用性・運動性能・環境性能を全方位で向上
でした。
MOTOR TALKを見ていて感じるのは、Cクラスに関する議論が熱いこと。
それぞれ明確なCクラス像を持つがゆえ、意見がきっぱり分かれています。
デザインについては多少の抵抗があるのみ、新技術に関してはオープンな印象ですので、よいスタートを切っているでしょう。
お読みいただきありがとうございました。
しげでした。
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